痛み

もう忘れたと思っていた。
もう思い出すことがないだろうという事すら忘れていた。

なのに、ほんの一瞬、私の記憶にチクチク刺す痛みが走った。

涙が溢れるほどの大きな揺れはこなかったけれど、私は「あの頃」を思い出していた。

「あの頃」の記憶は、今では特別悲しくもなく、嬉しくもない、不思議な映像となって私の「現在」をしばしの間止めてしまったが、それらを思い出してみたところで「あの頃」に帰れるわけでもなく、帰りたいわけでもなかった。

ただ、時として「音」という作用は、思いがけないタイミングで私を記憶の中へとさらって行ってしまう。

そして、心に刻んだメロディーの数々は、見えないトゲのように記憶に刺さっていることを今更ながら思い知らされた気がした。

カテゴリー: 　　自分
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Update: 　　2007/06/07